大判例

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仙台高等裁判所 昭和29年(う)178号 判決

指定価格を以て物品の販売を委託され、その指定価格より高く売却したときはその超過額を受託者の所得とする特約ある場合は、その物品を売却した代金中指定価格に満つるまでの部分はこれを受領すると同時に委託金の性質を有するものであつて、受託者は委託の本旨に従い指定価格相当部分を適宜特定してこれを保管すべき義務あり、委託者において特にこれが自由使用を許した場合でない限り、私にこれは使用することはできないものというべきである。原判決挙示の証拠並びに当審における証人江藤正春の証言及び被告人の供述によれば、本件契約の内容は江藤正春が被告人に対し指定価格を以てゴム製品の販売方を委託し、指定価格より高く売却したときはその超過額を被告人の所得とする特約であつたが、指定価格相当額を被告人の私用に使つてもよいという話はなかつたこと、原判示七万一千二百十五円(ただし、後記の如く原判示昭和二十六年十一月中旬を基準とすれば当時までの金額は約三万七千九百六十五円)は被告人が江藤から委託を受けてゴム製品を売つて受領した代金中指定価格に相当する部分であること、及びしかるに被告人はこれを江藤に無断で勝手に自己の私用に費消したものであることがそれぞれ認められ、被告人の弁解する如く横領する意思がなかつたものとは認められない(被告人自身当審においては、取立代金中指定価格に相当する部分を勝手に使つてよいとは思つていなかつた旨供述している)から、原判決が被告人の原判示所為を刑法第二百五十二条第一項の横領罪に問擬したのは相当であつて、原判決には法律の解釈適用を誤つた違法なく、記録を精査し当裁判所のなした事実取調の結果に徴しても原判決のこの点に関する事実認定に過誤あることを疑うべき事由は存しない。論旨は、本件は被告人の名を以て被告人の損益計算において販売するもので、江藤より販売に対する報酬を受ける特約はないから、江藤との関係は単純な代金後払いの売買であつて委託販売ではなく、仮に委託販売なりとするも委託販売においては売却代金全額が受託者の所有となるもので委託者に対する関係は代金支払債務を負担するに過ぎないから、原判示の如く被告人が江藤のため売上代金を預り保管するいわれなき旨主張するけれども、前敍説明に照し独自の見解で採用できない。なお、論旨は売却代金全額が受託者の所有となるものなればこそ受託者において売却代金の金額の種類を例えば百円札十枚を千円札一枚に切替えて委託者に支払つても差支なきものなる旨主張するけれども、その然る所以は、ただ、金銭は代替性を有するから一般取引上の通念に従いこれを代替することは、委託の本旨に反せず、委託者特にこれを禁止しない限り、これを以て横領行為となすべきではないというに過ぎないのである。論旨は理由がない。

〔後略〕

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